滲むゆくえは、知らないかたち?
舞台「染、色」の配信が終了しました。
これで、本当の本当の終わりですね。お疲れ様でした。
私のツイートをよく見たり、私が喋ってるのを聞いたりしてる人は思うでしょう。
「何回染色の話すんねん」と。
わかる。私も思ってる。何回話しゃあ気が済むねん。
恐らくこれで最後なので!許して下さい。
これは、舞台を観劇した一個人、というより一オタクの重い想い(掛けてみました)があふれてこぼれて、140字じゃ足りないな…と思い気まぐれに書いてみただけのブログですので、悪しからず。
実のところ結構、見るのしんどかった〜。
"しんどい"という言葉が観劇後の感想として適切なのかは分からないけど、胸が詰まったとか疲労したとか、そんな気持ちを簡潔に表す言葉が分からないし、色んな意味を含めてこの感情を表すのは"しんどい"が一番しっくりくる。失礼な意味合いではないのは、観た人なら分かってくれると思う。
何がしんどかったって、ラブシーンがとかじゃなく、登場人物全員の感情を拾っちゃってしんどかった。
↓観劇後のツイート
死ぬほど感受性豊かだから色んな想いやそれぞれの人生観を拾っちゃって観劇後凄く摩耗感があったんだけど、それを凌駕する感動と混沌と「この感情を忘れたくない」って思いでいっぱいでした
— ねむむ (@Homechigirist_) 2021年6月26日
個人的には小日向さん演じる原田がどんどん愛おしくなって、ずっとインタビューページを読んでしまう
誰かの人生に没入するって疲れるししんどい。たった2時間10分の舞台でも、たった6人のキャストでも、すごく移入しちゃった。これは私の感受性の問題もある。
将来とか夢とか愛とか恋とか、憧れとか嫉妬とか。あの世代を経験した人なら一度はぶつかる壁に直面している人達と、共に過ごしている感覚。俯瞰的に見ているはずなのに、共鳴してしまうほどの共感。苦しかったな…。
あとしんどかった点としては、深馬の事を好きになれなかったこともあるかもしれない。
杏奈の扱いも、真未への羨望をぶつける姿も、友人達との付き合い方も…どうしても好きになれない。ただ、深馬みたいな人間はそこら中にいる。間違いなくいる。
きっと側から見たらミステリアスな人なんだろう。でも、夢や才能の物差しに溺れて理性を失って、その結果人を傷つける事を発する、私と同じ様に未来に不安を抱えながら生きる、普通の男の子だったんだと思う。
染、色は、深馬だけの話じゃない。真未も、杏奈も、北見も原田も滝川先生も、全員が歪で、苦しんでた。深馬はそれを知らなかったろうし、知ろうともしてなかったんじゃないかな。
隣の芝生は青い。
自分は非凡だと思い込み、真未の自由に憧れ、滝川の不自由を見下してた。ように見えた。
私は、基本的に担当が演じた役はどんな役でも好きになる。というか、愛おしくなる。正門君の演技を欠かす事なく観てるのか!と言われたら自信はないけど、少なくとも映像に残っている正門君が演じた役は全て愛おしい。なんせドラマ落ちのオタクだし。
深馬は酷くて惨めで、人間臭い様な、血が通っていないような…とにかく、あまり好きになれない人だった。
ただ、嫌いにもなれなかった。それは、深馬も苦しんでるから。深馬の苦しみにも共感してしまったから。
パンフレットの対談で、演出の瀬戸山美咲さんと脚本の加藤シゲアキさんが「深馬は酷いし、弱いところも見せる。でも正門なら大丈夫だと思う」みたいなこと言ってた(確認してないから朧げ)。
もし深馬を他の人がやってたら、こいつ嫌い!って言ってたのかな。正門くんの、優しくて実直で温厚な人間性を知ってしまったから、フラットな目線で観ることが出来ていないかもしれない。
でもそれ込みでも、深馬は可哀想な人だと思う。
だから、大好きな正門君が深馬を演じてる事が苦しかったのかもしれない。大千穐楽を終えた日、正直すごく安心した。勿論、無事に何事もなく走り切ることができて良かったという安堵もある。でもその中には間違いなく、「もう正門君が深馬になることはないんだ」という気持ちも含まれてた。
正直に言うと、深馬が怖かったんだと思う。
私と同じように悩み、壊れていく深馬が怖かった。いつからか自分自身を投影していたのかな。
正門くんが深馬に乗っ取られてしまうんじゃないかって、すごく怖かった。それくらい深馬は私にとって大きな存在だった。
結局のところ、何も分からない。以前書いた染、色感想ブログだって、ただの私の解釈。何が正解か?これから6人がどう生きるのか?知る由もない。
それでいいし、それがいい気がしてる。正解なんて知りたくない。私の中であの6人は生きている。
人間は惨めで弱いから、たくさん苦しむし、たくさん悩む。でも、苦しんで悩む強さを持っている。誰もが葛藤と共存しながら、這いつくばって生きている。
全てが染められてしまった深馬は、杏奈や友人とかに縋りながら生きていくのかな。きっと心のどこかに真未の面影を探しながら生きるんだろう。精神的な所はわかんないけど。
とにかく、終わった。終わったね。
あの、2020年3月、NEWSの番組で加藤シゲアキさんが発表したあの日から始まった「染、色」が終わった。
きっと私、この戯曲を忘れない。
「染、色」につけられたシミは、どれだけ時間が経っても消える事は無いんだろう。
余談ですけど、杏奈マジで地雷女だと思う。劇中は不憫な所が多かったから同情しがちだったけど。地雷女と地雷女製造機で果たして幸せになれるんかな?